不動産業界へ入った経緯を教えてください

少なくとも自分の経験が無駄にならないようにしたい

私が社会人になったときの最初の就職先はトラックドライバーでした。
特にやりたい仕事も無かったので、初任給が他の職種より高かっただけで決めてしまいましたが、これが後の人生を左右することになったのかもしれません。
その会社は大手百貨店の配送を受けており、私は家具の配送部門に配属となりました。1日に4件ほどの自宅への配送でしたが、お客様は百貨店で家具を購入されるご家庭なので運ぶのは高級な家具ですし、またご自宅も新築であるとか、立派な豪邸ばかりでした。当然、家にも家具にも傷一つ付けられないので、慎重さを求められる仕事ですが、それだけでなくお客様と顔を合わせて会話もしますので、会社の印象を左右する大切な部門でもありました。

当初はやりがいもあり、先輩にも認めてもらうために懸命に技術を盗みました。2tトラックでしたので、乗用車と比べ車体も大きく、視界も狭く、後方は全く見えませんでしたが、そのときの運転で車両の扱いの基礎を身体で覚えました。
毎日神奈川県全域の色々なところに配送しました。当時はインターネットの普及も無い頃だったので、事前のルート確認も地図とにらめっこをし、道を頭に入れることも大変でした。
仕事に慣れてくると、いつの間にか若さから重たい荷物も腰をかがめて持たないようになっていました。腕の力だけで作業していたためか、定期的にぎっくり腰を起こすようになりました。まだ24歳の自分の身体がこのようなことになったのに、将来もずっとドライバーのままでいるのに不安を感じ、某大手宅配業者に勤め先を変えました。それでも身体に改善がみられないので、この業界から離れるのであれば、20代のうちが良いと思い始めました。
定年まで勤めることができるスーツ組になりたいという単純な考えがきっかけでしたが、26歳のときに今の社長とのご縁があり入社しました。

実際の不動産業界の印象は、どのようなものでしたか？

簡単に出来ると思っていた自分がいました

車は運転できますし、道を知っているので、安全にお客様をご案内するだけなら誰よりもうまくできると思っていました。またセールスについても、それなりに自信がありました。某大手宅配業者でもセールスをしなければならず、そのときの売上げは営業所でベスト3に入ることもあったからです。
実際に入社して初めて気が付いたことですが、当時の私は言葉遣いが全くできていませんでした。私はドライバー経験しかなく、いままでお得意様や会社の仲間を相手にした、フランクでフレンドリーな会話しかしていませんでした。
周りのスーツを着ている人達が、当たり前のように「俺」や「自分」とは言ってないことに、そもそも社会人としての日本語やマナーに欠けているのだと思い知らされました。
私は不動産は個人消費の中で一番高いものを取り扱うのに、営業マンが安っぽいとダメだと感じました。
ですが今までの習慣を変えることは難しく、社会人のマナーの本を買い、社会人としてのスタートラインに立つことから社長に指導され、「何でそんなことまで？」と疑問を持ちながら嫌々やっていたこともありました。
「ご案内時にはお客様とお話しすることになるので、第一印象から大事にしなければ、次に会う機会がもらえない」と教えてもらったときにようやく、不動産業は宅配の仕事のように一度でお客様とのやり取りは終わらないので、自分自身の根本から仕事に対する考え方を変えなければならないのだと理解しました。

新人時代のエピソードを教えてください

「石の上にも3年」とは本当ですね

今どきでは考えられないほどに物を知らず、要領も悪く、社会人としても至らない部分も多かったので非常に苦労をしました。
パソコンもほとんど触ったことがなかったので、資料の作成や広告の入力などでも時間が掛かり、毎日帰りがとても遅くなっていました。細かな気配りや作業が苦手だったので、いつも指導されてばかりで、何度も自分はこの仕事に向いてないのではないかと自問自答したのを覚えています。
ですが持ち前の負けん気の強さで「このまま誰にも認められないまま去るのも嫌だ！」と、歯を食いしばった日々が懐かしく思えます。

不動産業のどのようなところに魅力を感じますか？

誰にでもできる仕事では無いのだと実感してきましたね

お客様のお住まいになられる家には、決まるまでにそれぞれのエピソードがあり、時には「私と出会わなければ一生家を買うことは無かった」と言っていただけるところです。お客様が人生を左右するかもしれない私の提案を受け入れて、お住まいに満足いただけたときに幸せを感じます。
すでに何件ものお客様とのご縁をいただきましたが、今でもリフォームなどで昔のお客様のお手伝いすることもあります。長いお付き合いのあるお客様がいらっしゃいますが、お互い信頼が無ければそうはなりません。素敵なお客様との出会いの場でもあると思います。

不動産営業として必要だと思う考え方は？

私も自分の話をするときは、
今でも恥ずかしいと思うことはあります

お客様が話しづらいことも、私に話してもらえるよう、私がお客様を理解することですね。お客様は初対面の相手には「聞きずらい、あまり本音を話したくない」と思われます。日本人は謙虚な人種ということもあり、お客様に本音をお話しいただくまでには、相当な期間と信頼関係が必要だと思います。その中で、より早くお客様と信頼関係を結ぶため、私のことを包み隠さず話し、お客様に私を知っていただくことから始めようと思いました。
お客様のことを聞く前に、まずは自分のことを話さないと本音を話してもらえないと考えています。

お客様と接する上で心掛けていることは？

色んな事にアンテナを張り、情報収集こそ仕事の要

私が心掛けているのは、お客様を知ることです。
そのため、お客様がどのような環境下で育ってきたかをお尋ねすることが多いです。育ってきた環境の影響力はものすごく強いので、お客様の希望するお住まいの参考になるのです。
ご夫婦のご実家の場所や規模など詳しく聞いたりしますと、お客様はその環境が良かったとか、ダメだったとか、せきららなご意見を言ってくださいますので、私もどのようなお住まいが理想かイメージしやすくなります。
他にもなぜ今のお住まいから引越しを検討しているのかや、実家と今のお住まいの比較など、答えやすい内容を聞くことにしています。

そのように家を探す動機を重点的にお伺いしつつ、世間話を織り交ぜながら接客させていただいております。
ずっと購入物件のことばかり話していると飽きちゃいますよね？
私は話題に事欠かないよう、常に新しい情報を頭に入れるようにしています。お客様とは楽しくお話しながらも、お客様のために徹底した情報取集もしています。

仕事のやりがいは？

立場が変わると、
自分の性格をも変えないとならないこともありました

現在は取締役店長の役職をいただき、会社の運営と部下への教育に力を注いでいます。会社では売買仲介以外にも、総務、経理、賃貸管理、売却部がありますが、それぞれのセクションの実務も私が理解しなければ良いアドバイスもできないので、覚えることが山ほどあります。新しいことを覚えるのは大変ではありますが、この仕事は、民法の改正や建築基準法の改正、税制の改正、銀行の審査基準の変更等、情報が時期や年度によって更新されるので、それほど抵抗なく取り組めています。
仕事をするうえで欠かせない仲間たちにも、ストレスなく取り組んでもらえるように、効率化を求めて最善を尽くし、業績を向上させる役割を担っていくことにやりがいを感じます。
営業マンには私が歩んできた遠回りの道よりも、最短で成長できるようにアドバイスをしています。私から学んだ部下が難しい案件にもチャレンジし、成功したときは自分のことのように嬉しく感じます。
また、お客様から部下を褒められることが一番励みになります。
これからもっと発展するために私自身も努力を重ねて精進したいと思います。